性病、STD検査を怖がらないで

梅毒の特徴

梅毒は、トレポネーマと呼ばれるらせん状の微生物の感染によって生じる。トレポネーマは、長さ5〜12μmで、乾燥に弱く、39℃で5時間または−10℃で3時間程度で死滅し、48℃30分程度で感染能を失う。よって、人体外での長時間の生存は不可能と考えられている。
治療法の確立されていなかった当時は悲惨な末路をたどる「不治の病」であったが、現在では治療法が確立され患者数も多くはない。
しかし、梅毒の再発を繰り返す場合HIV(AIDS)との複合感染をしめす事例が多々あり梅毒の感染が疑われる場合は同時にHIV(AIDS)感染の検査をすることを強くお勧めする。

 

感染経路

陰茎や陰唇、時に口唇の皮膚や粘膜に生じた傷から性交時に侵入する他、梅毒の症状が進行し性器周辺やわきの下などの皮膚や粘膜がこすれ合う部位にできるイボから出る分泌物(ここには大量の梅毒トレポネーマが含まれている)から感染する。しかし、傷のない皮膚から侵入することはまずない。また、食器等を介しての感染も可能性としては考えられるが、積極的に自ら梅毒菌を摂取しようとするような特異な事例を除き、実際に起こる可能性は極めて低い。

症状

感染後、無症状の時期(潜伏期)と症状のある時期(顕症期)を交互に繰り返し(第1期から第4期位まで)ながら、慢性に経過する。皮膚、粘膜に梅毒特有の症状が現れたものを顕症梅毒、特に症状の無いものを潜伏梅毒と言う。
感染初期には、梅毒トレポネーマは感染部位に限局しており、感染から約3週間の第1潜伏期を経てから、感染部位に一致して小豆大〜エンドウ豆大の痛みのないしこりができたり、リンパ節が腫れたりする。このしこりや腫れは、いずれも自然と消えて行ってしまうが、このまま放置しておくと梅毒は血管やリンパ管を通じて全身に広がっていくこととなる。(第1期)
感染から約3カ月ほど経つと、感染部位から血行・リンパを介して全身に広がり、全身(特に手のひらや足の裏)に痛みやかゆみの無い赤い斑点が現れたり固く盛り上がったイボの出現・口腔内の粘膜にできものができる等の症状が出現する。できものから出る分泌物は悪臭を放ち、病巣から多数の梅毒トレポネーマが検出されるため、この時期は感染力が強く、他人に感染させやすい。また梅毒が原因の頭部の脱毛も見られる事がある。ここでも時間がたつにつれ、症状自体は自然に消退し第2の潜伏期間に入る(第2期)
感染後、約3年を経ると、固く表面が崩れやすいしこりが全身に現れる。この時期になると、病巣からの梅毒トレポネーマの検出はごく僅かで、もはや感染源となる可能性は少ないが、見た目が異様になり、明らかに異常であることがわかる。(第3期)
感染から約10年を経ると、感染は心臓血管系や脳、脊髄を侵して、梅毒性大動脈炎、脊髄癆、進行麻痺などを生じ、次第に死に至る。しかし、しっかりとした検査と治療をおこなえばここまで進行する例はほぼない。(第4期)
妊婦が梅毒に感染している場合、胎盤を経由して胎児への感染が生じる、感染た場合その多くは流産となる。先天梅毒児として出産されるのは妊娠後期に胎児への感染が生じたものが多い。なお、先天梅毒は、成人梅毒とは、やや異なった症状、経過を示す。

検査方法

血液検査により、血中の抗梅毒トレポネーマ抗体の有無を調べ間接的に梅毒に感染しているかどうかの推察をするSTS(Serologic Tests for Syphilis)と、梅毒トレポネーマそのものに対する抗体を検出するTPHA(梅毒トレポネーマ血球凝集テスト)の2種類。感染第2期のイボやしこりから出る分泌物を調べて検査をする方法のいずれかである。
感染初期にはSTS・TPHA双方検査が実施される。STSには、緒方法、ワッセルマン反応、RPRカードテスト、ガラス板法などの種類があるが、梅毒トレポネーマそのものに対する抗体の有無を調べるものではないため、梅毒に感染していなくともSTSが陽性となることがある。これを生物学的偽陽性反応(梅毒以外の理由によって陽性となってしまうこと)があるので診断には注意が必要とされている。しかし、STSは感度が高く、感染早期(感染から4〜6週間後)に陽性となる。また、疾病の進行と抗体価が平行し、梅毒が治癒すると検出されなくなるという特徴がある。
TPHAは、偽陽性は少ないが、感度が低く、感染してもなかなか陽性にならないことがある。また、梅毒が治癒した後も陽性となり続けることがあり、治療効果の判定に使用することは不適切である。
STSとTPHAがともに陽性の場合、梅毒に感染していると診断される。問題は片方のみが要請の場合であるが、STSのみが陽性の場合は、梅毒の感染初期で、TPHAがまだ陽性となっていないか、梅毒以外の原因による偽陽性となったと考える2つの可能性がある。STSが陰性で、TPHAのみが陽性の場合は、過去に梅毒に感染して、既に治癒しているか、梅毒以外の原因による偽陽性と考えることができる。

治療方法

感染早期の治療は、安く安全なペニシリンが最も有効で、ペニシリンに対する耐性菌は、まだ見つかっていない。内服・注射などによる投薬で十分な量のペニシリンを少なくとも10日間投与すれば、完治すると考えられている。治療第1日目に39℃前後の発熱を見ることがあるので解熱剤の使用が推奨されている。
その他ペニシリン以外では、テトラサイクリン系、マクロライド系抗生剤が使われる。
感染から満2年以上が経過した晩期梅毒については、完治するか否か、定かではない。大量の抗生剤を連続投与しても、STSが陰性化することはなく、ある一定の低い値で固定化する傾向にある。もっと、治療をしなければ死に至る病であることは変わらないので、治療を行う意義があることは言うまでもない。